huuchiの音楽論文案内

音楽関連の論文案内ツイートを記事にまとめています。過去ツイも順次追加中。

歌唱におけるperiod-doublingの発生:伝統的なサルデーニャのア・テノーレ歌唱におけるバッスのケース

 

『歌唱におけるperiod-doublingの発生:伝統的なサルデーニャのア・テノーレ歌唱におけるバッスのケース』

www.researchgate.net

 

 

イタリアのサルデーニャのア・テノーレ(テノーレス)の低音の歌唱法について、そのバッス(バスパート)歌手と、バッス発声を模倣できるフランス人歌手で調査した。


ア・テノーレは現在でもサルデーニャ島中央部と山岳部で実践される伝統的コーラスで、男性歌手4人組で歌われる。最も低いパートはバッス(bassu)と呼ばれ、声帯と仮声帯の振動を組み合わせたperiod-doubling発声を用いて、通常は約200Hzの基本周波数で歌うが、知覚されるのはその半分の約100Hzである。


period-doubling発声は、病的な発声や幼児の発声でも見つかっており、歌唱では、モンゴルのカルグラー(喉歌)やチベットのDzo-ke声明など、アジアの歌唱文化ではよく見られる。


調査の結果、バッスの発声は、典型的なperiod-doublingの特徴を示した。声帯の接触面積は声門の振動周期ごとに変化した。EGGの波形はFuksらが観察した「声帯ー仮声帯発声」に類似した。


DEGGは振幅が交互に変化する声門閉鎖ピークを示し、ある声帯振動周期で急速な閉鎖運動があり、次の周期ではよりゆっくりとした閉鎖運動が続くことを示唆した。


フランス人歌手のビデオストロボスコープ検査では、period-doubling発声中に、仮声帯ひだは二つの声門周期ごとに接触していることが確認された。
この結果はFuks、Sakakibaraらの調査結果と一致している。


音素コンテキストはバッスの低音を生成するのに役立つようである。サルデーニャのバッス歌手は、常に有声子音の/m/または/b/で音楽的センテンスを開始し、サブハーモニック(基本周波数のオクターブ下)の振動パターンが非常に速く確立され、非常に低いピッチのアタックの知覚的印象を与える。


また、センテンスの終わりは常に有声子音/m/で終えており、図1のように、period-doubling現象は消失している。


period doublingは、Gibiat及びCastellengoによれば、非常にリラックスした声帯と低い声門下圧によって行いやすくなるが、これは歌手の喉頭感覚と一致している。


period-doubling phonation:「声帯ー仮声帯発声」の一種であり、声帯と仮声帯の振動周波数が2:1の整数比となる発声のこと。日本では喉歌の研究者や歌唱者などにカルグラー発声として知られている。

 


元ツイート:

 

 

この記事及び元ツイートは論文(の存在)を紹介するだけの簡単なものですので、詳しい内容についてはリンクから元の文献を参照してください。