huuchiの音楽論文案内

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ヒト口蓋咽頭筋の形態的・機能的意義を考える

 

『ヒト口蓋咽頭筋の形態的・機能的意義を考える 』

https://www.jstage.jst.go.jp/article/johb/34/2/34_19/_pdf

 

 

レビュー論文。

“口蓋咽頭筋は,文献報告が少なく,教科書においても詳細な記載の少ない筋”“軟口蓋の構成にも関わっており…軟口蓋の筋構築を考える上で主要な筋のひとつであり,呼吸・嚥下機能の面からも重要な役割を担っている”

 

“縦走部は咽頭側壁内面の口蓋咽頭弓内とその周辺に沿って下行し,甲状軟骨,咽頭側壁から後壁にわたる内面粘膜下,および咽頭後壁正中の咽頭縫線に達する”“教科書に記載されているいわゆる口蓋咽頭筋はこの縦走部に相当する”

 

“横走部は口蓋咽頭弓には入らず,咽頭峡(軟口蓋後面と咽頭側壁・後壁に挟まれる部で,鼻咽腔閉鎖時に閉ざされる空隙)の側壁から後壁を背側に向かい咽頭縫線に達する”

 

〈縦走部の起始筋束〉
“縦走部には4つの起始筋束が存在”“口蓋腱膜内側半の口腔面から生じる起始筋束(図2のoPPn)が主流で,その一部の筋線維は正中で対側の同じ筋線維と合一する”

 

“口蓋腱膜の鼻腔側にある筋束(図2のnPPn)は薄くかつ細く,口蓋腱膜内側半の鼻腔面後縁に近い部から生じる。この2つの筋束は,口蓋帆挙筋を挟む形でそれぞれ同筋の口腔側と鼻腔側を後方に向かう”

 

“3つ目は口蓋帆挙筋の後方で口蓋垂の正中粘膜下より生じる弱い筋束(図2のpPPn)で,口蓋帆後縁に沿って外後方に走る”

 

“4つ目の起始筋束は耳管咽頭筋(図1・2のSP)である。耳管咽頭筋も微弱な筋束で,口蓋帆挙筋の鼻腔側で耳管軟骨咽頭端の後縁から生じ,咽頭峡側壁において耳管咽頭ヒダを形成しつつ下行する”

 

“これら4つの起始筋束は口蓋帆挙筋の後方で合流し(図2),口蓋咽頭筋縦走部(図2のPPn)を形成して,口蓋咽頭弓とその周辺の粘膜下に達する”

 

〈縦走部の停止筋束〉
“停止筋束には,咽頭喉頭蓋ヒダを形成する筋束(図1のe),甲状軟骨の後縁に付着する筋束(図1のt),咽頭側壁から後壁にわたる内面の粘膜下に達する筋束(図1のh),咽頭縫線に停止する筋束(図1のpo)の4つが存在”

 

“停止筋束eは舌骨の内側を下行して結合組織化し,咽頭喉頭蓋ヒダを形成して喉頭蓋軟骨側縁や喉頭蓋谷の粘膜下に達するもので,主として茎突咽頭筋からの筋線維より構成される。同じく舌骨の内側を下行して甲状軟骨後縁に付着する停止筋束tにも一部,茎突咽頭筋からの筋線維が加わる”

 

〈横走部の起始と停止〉
“横走部(図2のPPS)は,口蓋腱膜外側半の鼻腔面後方寄りと翼状突起内側板の下縁から生じて口蓋帆挙筋の外側・口腔側を後方に向かい,咽頭峡側壁に入る。咽頭峡側壁では,横走部は口蓋咽頭弓には向かわず,縦走する耳管咽頭ヒダの外側を横切って咽頭後壁に向かう(図3b)。咽頭峡後壁では,横走部は上咽頭収縮筋の咽頭粘膜側に入り,上咽頭収縮筋の筋線維と混ざりつつ咽頭縫線に達する”

 

咽頭腔は共鳴腔としては大きく,咽頭壁に大きく拡がる口蓋咽頭筋(狭義)が共鳴効果に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられる”

 

“鼻咽腔閉鎖の様式は発音時と嚥下時で異なることが知られており,発音時の鼻咽腔閉鎖では軟口蓋の挙上が主であるのに対して,嚥下時では,挙上された軟口蓋に対向する咽頭峡の側壁と後壁が内方に膨出し,咽頭峡は括約されるように閉鎖される”

 

咽頭峡の側壁から後壁にわたる粘膜下を後方に走るのが横走部”“横走部の収縮は咽頭峡を括約する”“Whillis 14)は,横走部に対応すると思われる筋束(図2のSCPの内・外二層のうちの内層の部)をPalatopharyngeal sphincter(口蓋咽頭括約筋)と命名しており,横走部は口蓋咽頭括約筋であると考えられる”

 

“口蓋咽頭括約筋の収縮が引き起こす咽頭峡粘膜の内方への膨隆(図3aのPPR)をパッサーバン隆起とみなして,Gray’s Anatomy 15)では同筋をパッサーバン筋と表記している”

 

“嚥下時に咽頭峡が締め付けられるように四方から閉ざされるのは,発音時に比べて咽頭峡により完全な閉鎖が求められるから”“口蓋咽頭括約筋が嚥下時の完全な鼻咽腔閉鎖を完遂するには,口蓋垂筋と耳管咽頭ヒダの協調が必要”

 

口蓋垂は腺組織に富んでおり 3),パッサーバン隆起との接触圧により腺組織から押し出された分泌物が,閉鎖の気密性をさらに高めることが考えられる”

 

“口蓋咽頭括約筋は上咽頭収縮筋の最上部筋束に過きず,括約筋としての役割は上咽頭収縮筋よるものとさえ言われてきた 4)。われわれはこの移行域の筋束構成を解剖学的に調べ 4),口蓋咽頭括約筋は上咽頭収縮筋とは別個の筋と考えるべきものであり,パッサーバン隆起を形成して軟口蓋後縁に押し付け,耳管咽頭ヒダと口蓋垂筋の助けも得て鼻咽腔閉鎖の効果を高める作用をもつものとみなした(図4)。”


“ヒト舌骨は頭蓋から遊離している。このことがヒトでの喉頭下降を可能にした要因の1つと考えられる。喉頭下降が元来の口蓋咽頭筋の走行に影響を及ぼし,ヒト固有の口蓋咽頭筋縦走部(狭義の口蓋咽頭筋)を形成させた可能性”

 

喉頭下降により咽頭領域が拡大した点を考えると,咽頭収縮筋の形態・配列にも喉頭下降が影響していることも考えられる”

 

“口蓋咽頭筋や茎突咽頭筋も含めた軟口蓋・咽頭域の筋構築を比較解剖学的に調べるに際しては,筋のみに着目するのではなく,舌骨装置の頭蓋との連結様式と頭蓋に対する可動性にも考慮して調べていく必要がある”

 


元ツイート:

 

 

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