huuchiの音楽論文案内

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自閉症者の「並外れた才能」再考 

自閉症者の「並外れた才能」再考』

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“本稿では,自閉症者に見出される “並外れた” 才能という信念がどの程度実証的な根拠に基づくものなのか,絶対音感(absolute pitch)と瞬間的な数の把握(スービタイジング:subitizing)を取り上げて検討を行い,そうした才能が出現する理由について再考する”


“APは,perfect pitchとも呼ばれるために誤解されやすいが,100%の正確さで音名同定できることがAP保有の基準となっているわけではない。APの査定には,ふつう数オクターブにわたる白鍵音と黒鍵音(♯あるいは♭のついた音)の音名同定課題が用いられる”


“低めの基準では60%以上の正同定率(Miyazaki & Rakowski, 2002)が,高めの基準では90%以上の正同定率(Profita & Bidder, 1988)が使用されており,研究によって用いる基準にかなり幅がある”


自閉症とAP保有の関連を示唆する新しい研究”“自閉症それ自体ではなく,自閉症者の親族にしばしば見出され,「広義の自閉症表現型(broader autism phenotype : BAP)と呼ばれる行動特性に着目し,BAPとAP保有の関連を調べた”


“AP保有者を募集し,APテストで68%以上の同定率を確認の上,地域のボランティア交響楽団員から選んだAP非保有者とともに,種々の面接やWechsler知能検査の動作性下位テストを行い,言語特性,パーソナリティ,そして認知特性を比較した”


“結果,「明らかに対人行動がエキセントリック」(definitely socially eccentric)と判定された割合は,AP保有者群で非AP保有者群と比べて有意に高かった(13人中6人対33人中5人)。”


“AP保有者群は,Wechsler知能検査の積木模様が山となる,自閉症に特徴的な認知パターンを示し,また言語の対人的側面,すなわちあいさつやお喋り,会話の進行などについての評価尺度(the Pragmatic Rating Scale : PRA),およびパーソナリティ評価尺度(the Modified Personality Assesment Schedule : PAS)においても非AP保有者群から区別された”


“しかしながら,他の研究と同様,遺伝要因と環境要因は分離することは困難であることに加え…方法上の問題が大きく,結論するには根拠が十分とは言えない”“自閉症とAPとの関連は,現段階では単に示唆される以上のものではない”


“上記以外で注目すべき研究…高機能自閉症と定型発達の青年・若年成人を対象としてピッチの弁別とカテゴリー化を比較”“結果,仮説が予測した通り,高機能自閉症者は純音のピッチの微細な差異を,定型発達者よりも鋭敏に弁別した”


“年少児の方が年長児よりも正確なAPを有し,年長児はメロディの相対的な特徴把握に優れる…3歳から6歳までの成長過程でピッチの絶対的知覚から相対的知覚へとシフトする”“音名を獲得するより早い段階でAPを獲得しうることから,APは言語よりもむしろ非言語的コードを媒介するという主張もある”


“一方,Saffran and Griepentrog(2001)は,乳児にとって,絶対的なピッチは顕著(salient)ではなく,むしろメロディのような全体の輪郭,つまり相対的なピッチへ注意が向かうのが自然であり,そのような全体情報が得にくい場合に,絶対的なピッチへのアクセスが増えると考えている”


“母親の声と合成音を幼児に聞かせ,定型発達児や発達遅延児は母親の声に選好を示すのに対して,自閉症幼児は合成音に選好を示す”“このことは,通常は,全体情報が顕著である乳幼児期に,自閉症児の場合は部分情報に注意が向けられている可能性を示唆”

 

 

元ツイート:

 

 

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