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連携と克服:ボイスティーチャー(歌声のスペシャリスト)と言語聴覚士から見たMTD

連携と克服:ボイスティーチャー(歌声のスペシャリスト)と言語聴覚士から見たMTD

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

この症例研究は、歌手の音声障害が専門の言語聴覚士と、発声学の訓練を受けた発声教師の協力に注目し、MTD(筋緊張性発声障害)の歌手に対する、治療及び訓練のプロセスを文書化したものである。


喉頭の専門医によりMTD(声門閉鎖の不完全と甲状披裂筋の機能亢進がある)の診断を受けた参加者(女性プロソプラノ1人)は、歌手専門の言語聴覚士の音声治療を受け、その後、発声学を修めた発声教師(ボイストレーナー)による音声トレーニングを受けた。


言語聴覚士は、外喉頭筋の緊張の軽減,リラックスした低喉頭,横隔膜による発声サポートを目標とした、6回の言語療法セッションを行った。
発声教師は、過剰な声門下圧の低減,リラックスした低喉頭,バランスの取れたレジストレーションとより良い共鳴を目的とした、2年間のボイストレーニングを行った。


音声治療(音声訓練)及びボイストレーニングの内容:
・内喉頭筋に対する外喉頭筋の筋力のバランスを取り戻すための喉頭周囲のマッサージ
・呼吸のバランスを取る訓練
喉頭の調整
・共鳴と調音に関わる音源の最適なフィルタリングの訓練
・音源とフィルタの調整のためのピッチの上昇下降を伴うリップトリル
・舌のストレッチ
・座位と立位の頭頸部の姿勢の改善
・特定の母音や子音を音域などに合わせて細かく組み合わせた、ピッチの上昇下降を伴う発声練習
・浅速呼吸(息切れのような早い呼吸)や笑うことで呼吸筋と喉頭筋の働きを認識する訓練
・手を腰に置き、笑うか慎重に咳払いをすることで筋肉の働きに注意を払い、過度に働く傾向がある腹筋を前方へ押し出さないようにする訓練
・舌を出しての浅速呼吸やあくびの喉によって、内外の筋のより良いバランスを取る訓練(発声時の圧力が最小限に抑えられるようになり、発声が容易になる)
・呼吸パターンと頭頸部の配置に特に注意を払った、全身の姿勢の取り方の学習(「耳の後ろ(乳様突起)から頭を持ち上げる」「頭のてっぺんから紐を引っ張って膝を柔軟に保つ」などが提言された)
・呼吸管理のための腹部を意識した座位姿勢の訓練
・甲状舌骨間の緊張の軽減に取り組み、喉頭をリラックス化
・舌骨と甲状軟骨の間の空間を観察し、喉頭から舌と顎を分離する訓練
・舌根のマッサージ
・リラックスしたニュートラルな喉頭位置のための、息を早く吸わないようにする訓練
・起声とレジストレーションのための、母音とスタッカートを使用したピッチの上昇下降を伴う発声練習
・舌を前に出した状態での発声及び持続発声(舌ラズベリー)、舌トリル
・高音域(D5-G5)を使った発声練習


尚、これらは今回の参加者用にカスタマイズされた治療法や訓練法であることに注意が必要である。
(音声治療(訓練)及びボイストレーニングの内容 ここまで)


参加者は当初は筋肉の使用の少ないテクニックを受け入れるのに困難があったが、次第により自由でオープンで成熟した声質になった。これにより参加者は、話したり歌ったりする際の自信が大幅に向上したことを実証し、報告した。


また、喉頭位置が改善され、ホイッスルボイスが発声できるようになり、裏声からホイッスルボイスへの移行も確立し、より高いF0へアクセスできるようになった。


この結果は、歌手の回復には、歌手のケアに関わる全ての専門家の協力と、専門家と歌手の信頼関係が不可欠であることを強く示している。


参加者:28歳のプロソプラノ歌手。声帯自体に病変はなく、披裂の閉鎖が不完全で甲状披裂筋の働きが過剰な筋緊張性発声障害であり、声域の縮小(高音発声困難),声量の減少,声の持久力の低下,鎖骨呼吸,異常に高い喉頭位置,高音域での胸声の過剰な使用などがあった。


発声学=vocology

 

 

元ツイート:

 

 

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