huuchiの音楽論文案内

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グロウル及びスクリーム歌唱の合成に向けた音響的特徴の分析

 

『グロウル及びスクリーム歌唱の合成に向けた音響的特徴の分析』

cir.nii.ac.jp

 

 

デスメタルメタルコアなどエクストリームメタルと言われるジャンルで頻繁に用いられる,グロウル及びスクリーム歌唱について音響的特徴の分析を行った”


〈はじめに〉
“1.1  デスボイス
デスボイスとは,デスメタルなど,エクストリームメタルの楽曲中の大部分で用いられる,非常に荒々しく,邪悪な印象を持つ声の日本における通称”“聴覚上の違いにより,慣習的にいくつかの声種に分類される”


“グロウル”“聴覚上低く,暗い印象”“基本周波数をほとんど認識できない声”“日本以外では単にグロウル(growl)ではなく,death growl,またはgruntと呼ばれることも多い”


“スクリーム”“グロウルに比べ高い声”“グロウルに比べ基本周波数を認識しやすい”


“ガテラル”“グロウルより更に低く,暗い印象を持ち,基本周波数も認識しづらい”“言葉の明瞭度も低い下水道のゴボゴボとした音の様に形容されることがよくある”“息を吸うことにより発声されることも多い”


“ピッグスクウィール”“豚の鳴き声のような,独特のビキビキとした響きを持つ”


“グロウルはLouis Armstrongなどのジャズシンガーが用いる,がなりのような,通常より荒々しい印象の唱法を呼ぶことがある.ゴスペルのシャウト唱法や,演歌の唸り唱法等が同様の唱法であると考えられるが,本研究ではこの唱法を区別のためポップグロウルと呼ぶことにする”


〈先行研究〉
“Sakakibaraらは高速デジタル画像処理による分析とEGG(Electroglottography)分析により,ポップグロウル音声の発声機構を調査”“声帯ヒダだけでなく,声帯ヒダ上部の披裂喉頭蓋ヒダが強く振動し,声帯ヒダの周期振動が持つ調波成分にサブハーモニクスが加わり,音源特性が変化する”


“Nietoの研究においてEVE(※Extream Voice Effect)はDistortion,Rattle,Growl,Grunt,Screamに分類され,Growlは本研究におけるポップグロウルに,Gruntは本研究におけるグロウルに,Screamは本研究におけるスクリームに相当する”


“Nietoは音声波形を観察することにより,EVE音声は大きなパルス(macro pulse)の中に複数の小さなパルス(small pulse)が含まれる,Macro pulse構造を持つことを発見”“例えば,ポップグロウルはMacro pulseの中に平均して3つのglottal pulseを含む”


〈音響特徴の分析〉
“グロウル音声,スクリーム音声の音響的特徴を分析するため,音声収録を行った.音声の収録はグロウル音声,スクリーム音声のそれぞれについて1名ずつ行った”


“スクリーム音声は135〜150Hz付近とその約3倍の400〜450Hz,また非整数倍の350Hz付近にピークが見られた”“ポップグロウル同様,サブハーモニクスが加わっており,130〜150Hzの2倍である周波数域のピークはサブハーモニクスに埋もれていることが考えられる”


“ポップグロウルのスペクトルでは1000〜1500Hzあたりの帯域にも周期的なピークが見られたが,スクリーム音声に関しては1000Hz以上の帯域でほとんどノイズ的であった”
“グロウル音声は全帯域でほとんどノイズ的であるといえる”


“スクリーム音声は442Hzにもっとも大きなピークが見られ,そのおよそ3分の1の147Hz,整数倍の関係に無い355Hzにピークが見られた.442Hzの整数倍にピークのようなものは見られなかった”“聴覚上442Hz付近をピッチとして知覚することができた”


“グロウル音声…ほとんどノイズ的ではあるが,ホワイトノイズとは異なり,200Hz以下の振幅が小さくなっている”“わずかながらではあるが,200Hz付近の振幅が他の周波数域よりも大きくなっている.聴覚上も200Hz付近をピッチとして知覚することができた”


“従来グロウル音声はほとんどピッチが無い声や非常に低いピッチを持つ声とイメージされることが多かったが,実際には成人男性が通常会話で用いる音域とあまり変わらない200Hz付近にピッチらしきものがあることが分かった”


“今回分析のために収録した音声はそれぞれの発声について1人ずつのものしかなく,歌唱者の個人性に依存する分があると考えられる.歌唱者を増やすことにより,それぞれの発声についてより一般的な特徴を得ることが重要であると思われる”

 


元ツイート:

 

 

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