『ヒト仮声帯の組織形態学的研究―年齢変化および男女差を中心に―』
“各年代別,性別に対象例の喉頭標本を集め,片側喉頭の声帯全長を8分割した.これらの分割した各標本の仮声帯を観察した後,これを再構築して仮声帯の立体的評価を行った”“21歳から79歳 までの54例(男性:27例,女性:27例)”
“年齢変化の影響については20~30歳代を若年成人層,40~50歳代を中年層,60~70歳代を高年層として3つの群に分けて検討”
〈扁平上皮化生〉
“化生の出現度は,若年成人層で59%…中年層で出現度がやや増加し61%で,高年層では減少し37%”“男性は前述の傾向と同様に中年層において63%とピークを示し,高年層では減少”“女性では若年層から高年層になるに従って出現度は減少したが,高年層でも化生出現度は44%”
“化生出現度の男女差を認めたのは高年層のみ”
〈脂肪組織〉
“脂肪組織の出現が少ないものを1度,多いものを3度とし,その中間を2度とした”
“脂肪組織の分布密度(図11):加齢により脂肪組織は増加し,高年層において特に顕著”“男女別にみると女性で著明であった”
〈膠原線維〉
“膠原線維の分布密度をα型(膠原線維が細く疎に分布),β型(α型とγ型の中間),γ型(膠原腺維が太く密に分布)の3群に分けて評価”
“膠原線維(図12):高年層においてγ型が減少し,β型が増加”“部位別にみると中央から喉頭内腔側にγ型が多かった”“表5より部位別に加齢の影響をみると,前述の傾向が認められたのは喉頭内腔側のみで,喉頭室側・中央部にはその分布に加齢変化を認めなかった”
“さらに図12に示した結果を男女別にみると,分布密度に男女差がみられた年代は中年層のみで膠原線維は中年層において男性はγ型,女性はβ型が多かった”
〈弾性線維〉
“弾性線維については黒染される線維の出現度を観察し,弾性線維の出現しないもの(0型),線維の分布が少ないもの(I型)と多いもの(II型)に分けて評価”
“弾性線維(図14):年代別にみると加齢に伴い弾性線維の出現度は増加傾向を示した.部位別には膠原線維と同様に中央から喉頭内腔側に多く出現し,喉頭室側の分布は少なかった”
“しかし表6より部位別の加齢変化をみると,加齢に伴い弾性線維の出現度が増加したのは喉頭室側だけで,喉頭腔側・中央部にはその出現度に加齢変化を認めなかった.また男女差は弾性線維においても同様に(図15),中年層において男性のII型が女性のそれに比べて多く出現していた”
〈腺組織〉
“腺組織の分布様式:仮声帯内の腺組織の分布を4つのパターンに分類”“腺組織が仮声帯全体に分布…D型(diffuse),仮声帯の中心部だけに密集している…C型(central),仮声帯の辺縁に密集している…M型(marginal),そして腺組織が密集せずに散在している…S型(scattered)とした(図6).”
“10歳代で腺組織の発育はピークに達し,仮声帯の大部分を占める程になり,20歳代ですでに腺周囲に結合織の増生傾向を認め,その後は徐々に減少傾向となり,40~50歳代では腺組織の萎縮を認め,60歳以上で腺の萎縮・消失が顕著になる”
“加齢に伴う腺分泌能の低下を効準よく補うために腺組織は辺縁部に残るものと考えられる”
“腺組織の分布様式(図10):中年層までは男女共にD型の分布のものが多い”
“女性の方が男性よりも加齢による腺の減少が顕著”“男性は高年層でも辺縁部に腺が比較的密集して存在するM型が多いが,女性の高年層は腺の分布密度が少ないため,散在しているS型が多かった”“中年層以後では男性に比して女性の方が仮声帯・声帯の乾燥が生じやすいことが推測された”
“腺組織の分布密度が減少した部位は脂肪組織や結合織の増生が著明であったり,腺組織が脂肪変性を来した部位に相当していた.ホルモンの減少は腺組織だけに影響するのではなく,脂肪組織や結合組織の増生を促し,二次的に循環・栄養障害をきたす可能性があると考えられた”
元ツイート:
ヒト仮声帯の組織形態学的研究―年齢変化および男女差を中心に― https://t.co/85oSjjqtWN
— 風地@毎日音楽の話を(も)しています (@huuchi) 2023年8月7日
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