huuchiの音楽論文案内

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歌手の喉頭ジストニア―歌唱者の痙攣性発声障害―

『歌手の喉頭ジストニア―歌唱者の痙攣性発声障害―』

www.jstage.jst.go.jp

 

 

「歌手の喉頭ジストニア」のケーススタディ

 

“歌唱を職業とする者に,歌唱時においてのみ見られる痙攣性発声障害を「歌手の喉頭ジストニア(singer’s laryngeal dystonia)」と名づけた”
“痙攣性発声障害の一亜形”

 

“当科において過去20年間(1993~2012年)に計373症例の痙攣性発声障害に治療を行った.この間に4例の歌手の喉頭ジストニアを治療”“いずれもプロないしセミプロの歌手で,クラシック歌曲2例(男性2例),クラシックとポピュラーの両方(女性1例),ロック(女性1例)”

“男性の一人は外転型痙攣性発声障害で,この例は,症例報告をしたが 3),本稿ではその後の経過を追加して略述する.他の3例は,内転型痙攣性発声障害である”

 

“症例1:31歳女性,クラシック(ソプラノ)・ポピュラー歌手”
“初診時4年前より歌唱時に声がつまる”“最近,話声位が低くなり,ときに声が震えることがある”“ボツリヌストキシン(以下BTと略す)を2.5単位両声帯に注射したところ,嗄声が生じたので,次回は量を減じて1単位を同様に注射して,発声は楽に”

 

“症例2:28歳女性,ロック歌手”
“初診時半年前から,声がつまり歌えなくなった.通常の会話は問題がない.声の乱用も過剰な発声練習もない.表1のごとくBT注射を頻回に受けつつロックの舞台はこなしていたが,転職のため治療を中断”

 

“症例3:40歳男性,クラシック歌手バリトン
“23歳のときに,歌唱時にのどの違和感を生じ声がつまった.高音が出なくなりビブラートも出づらくなった.これが進行したので,リサイタル活動は中止”“高校の音楽教師の仕事は,何とか続けている”

“当科でBT治療を行った.表2のごとく1回に注射するBTの量を少なくして,頻回に(年4~8回)注射”
“罹患前の声域はE2~A4(話声位B2),罹患後の声域はF2~C4(話声位A2)”

 

“症例4:46歳男性,バリトン歌手”
“初診時3年前より原因なく声が続かなくなってきた”“プロとしてのリサイタル活動は中止”“無声子音に続く母音の無声化があった.音階発声では高音が出ない”
“両側後筋にBTを5単位ずつ注射して声の改善を見た”“調子良いときに少人数の前でリサイタルを行っている”

 

“一般に後筋内注射後,声帯の外転制限(外転可動域制限や外転動作の遅れ)が見られる.そのことにより,無声子音に後続する母音の無声化や声帯振動の立ち上がりの遅れといった外転型に特徴的な所見が消失ないし抑制される”


ジストニアの特徴として,特異的な動作(task)で運動異常が発現し増悪する”“歌手が歌唱という動作の際にのみ声帯運動が障害される.通常会話では異常は起きない.通常会話と歌唱では錐体外路系レベルでの喉頭調帯が異なるものと考えられる”

 

“最近の国外の論文で1)競売人 4),2)宗教者の祈祷発声時 5),3)一般人の通常会話時 6)に起こるジストニアが散見される.それらは,発声時に発現するが,異常運動の発現はoro-mandibular(口顎)部であり,声帯での声の生成は正常である.歌手のoro-mandibnlardystoniaの報告は見られない”

 

“楽器演奏家(pianist’shand,violinist’shand,embouchure)のジストニアでは,遺伝,性格(完璧主義者),不安などの心理が認められ,男性に多いといわれる.歌手の喉頭ジストニアでは女性が多い 2).”

 

“内転型では,低音から高音に上げていくと声がつまってくる.進行すると高い声が出しにくくなり,声域は狭くなる”
“外転型では,無声子音に続く母音発声が困難となり,ビブラートがかからず,声に艶がなくなる.発声持続時間が短縮する”

 

“どの声種についても起こりうる.ロック歌手では,それほど不都合な事態は生じなかったので,コンサートを続けた”“早いパッセージ,音程が著しく上下するような複雑な歌唱は邦楽には見られないのも,邦楽で喉頭ジストニアの報告が見られない理由かもしれない.今後の研究課題である”

 

“内転型の場合,われわれの第2例,第3例のようにBT注射が一番現実的”“プロ歌手では,ごく微量なBTでも有効となることを自覚し,自分で量を調節して注射量を示唆してくる”

 

ジストニアの特徴の一つが感覚トリック”“発声時に顔や頚に手を当てたり手を握ったりするだけで,障害が軽減することがある.このようなことを患者が経験する場合はこれを各人に工夫してもらう”“歌手が表情豊かに身振り手振りを交えて歌うのは,発声にも良い影響を与えるのではないかと思われる”

 

“音楽家ジストニアは,器楽についての報告や研究は多いが,歌唱の際の喉頭ジストニアは海外での先行文献が1つだけである.本稿は,本邦では最初の報告”

 


元ツイート:

 

 

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