huuchiの音楽論文案内

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音声生成の生理学的背景

『音声生成の生理学的背景』

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/48/1/48_KJ00001456378/_pdf

 

“3.1 調音器官の形態”
“最も際立つ特徴はヒトで最も著しいといわれる咽頭腔の広さであり,これは言語獲得能力の理由の一つとされている”


“ヒトの進化に伴って喉頭が下降し,咽頭腔が延長して気道と食物道とが交差して口腔が直角に湾曲するようになると,気道を保つために咽頭腔は広く容易には閉塞しにくい形態が要求される。ヒトの舌の形状そのものが前後に短いこととあいまって,舌筋の中で最も発達したオトガイ舌筋後部がここで機能的な役割を果す。また,口唇閉鎖時に口腔前半で舌と口蓋とが接触し陰圧をつくる作用も,同様の気道保存に役立ち,舌の前方は口蓋と密着し易い形態になっている”


“声道は単純な音響管ではないことが次第に裏づけられてきている。最近のBaerらのMRIを用いた研究 10) は,声道形状についての基礎資料としての価値もさることながら,従来の音響管理論で軽視されていた声道の左右非対象性や梨状窩のような音響管の分岐が存在することを明示している”


“3.2 調音器官の機能”
“母音の調音には基本的には舌先の運動は関与しないので舌体(舌先を除いた舌の主要部分)の位置変化が主体となり,四つの外舌筋(外部の骨格から舌に挿入する筋)の収縮作用で説明できる”


“図-3は簡単な2次元モデルによってこれらの外舌筋の作用を図示したもの”


“筋長の短縮による付着点の位置変化だけでなく,体積保存の原則に従って舌全体の大変形をもたらす効果が舌筋の収縮作用の特徴”“最も下部に位置するオトガイ舌筋の収縮は,筋の付着点である舌根部を前方に移動させるだけでなく,遠隔の口蓋部において声道狭部を形成して狭口母音/i/の特徴を作る”


“筋電図法で観察される外舌筋の活動は個々の筋の解剖学的走行から推測される収縮効果とほぼ一致しており,前母音でオトガイ舌筋が,後母音で舌骨舌筋と茎突舌筋が強く収縮する”
“ただし,オトガイ舌筋の前部は単独では舌上面を下降させる作用があるにもかかわらず,狭口母音/i/で活動が大きく,同名筋の後部と同時に活動して舌正中面での溝形成と調音の安定化をもたらすような協調的制御が行われる”


“子音の調音では,口唇音などの舌の関与しない子音を除いて,これらの外舌筋の活動に舌の内部にある内舌筋と口腔底にある補助舌筋の作用が加わる。歯茎音では舌上面に沿って走行する内舌筋の収縮により舌尖が上に反り返る作用が加わり,口蓋音では補助舌筋であるオトガイ舌骨筋や顎舌骨筋の収縮により舌全体を挙上させ口蓋部での閉鎖を作る”


“3.3 発話器官の運動特性と協調”
“ロ唇や舌尖は質量が小さいうえに下顎の運動にも助けられるので運動速度は早く,反対に舌体は質量も大きく顎関節に近いので下顎運動の補助的貢献は少ない”“調音点が前方にあるほど変化が早く,後方にあるほど変化が遅い”


“4.1 声帯の形態と機能”
“振動に伴う声帯の変形については声帯粘膜において上唇と下唇の位相差を伴う波動状の変形が特徴的”“男性の低い発声ではこの特徴が顕著であるが,発声時のあらゆる状況でこのような典型的な粘膜変形が起こることは考えにくく,状況に応じた声質変化によって様々に変化するはず”


“図-4 日本語母音/i,a,u/発声時の喉頭の前額断面MRI画像”


“矢印が声帯,その上方にあるヒダが仮声帯,その間に喉頭室がある。母音/a/では舌根の位置が低く,喉頭室が圧迫されているように見える”


“一般に安静呼吸では吸気相で吸気筋が活動するが,呼気相では筋活動の関与しない組織の弾性に依存した呼気の排出が起こる。しかし,発声時の呼吸動作は安静時とは非常に異なり,一つのbreath group内では比較的定常な呼気圧が維持される。そこで,発声初期には呼気の出し過ぎを抑制するために吸気筋の活動が現れ,発声中期にその筋活動が減少し,発声後期に呼気をしぼり出すための呼気筋の活動が顕著になる”


“Fo下降時に働く筋としては胸骨舌骨筋(SH)が最もよく知られており,喉頭全体を引き下げる作用によりFoの下降をもたらす”“図-5はこれらのFo調節に関与する筋を示したもの”“Fo変化におけるCTの作用機序が自明であるのに対し,SHも含めて外喉頭筋によるFo下降のメカニズムについては定説がない”


“5.喉頭と調音器官との相互作用”
“発話器官は多くの筋によるネットワークによって相互に連結されており,音源の調節と声道形状の調節とが同一の調節要素を共有することが多く,このために音源と声道との相互作用が生じる”

 


元ツイート:

 

 

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