huuchiの音楽論文案内

音楽関連の論文案内ツイートを記事にまとめています。過去ツイも順次追加中。

①吹奏楽器演奏時における鼻咽腔閉鎖機能不全に対して上咽頭脂肪注入が奏効した例 


この記事は、管楽器奏者の「鼻抜け」、つまり鼻咽腔閉鎖機能不全についての論文の、Twitterの紹介ツイートをほぼそのまま転載してまとめたものです。

ツイートと同じ内容を改めてブログ記事にしたのは、より検索でヒットしやすいブログに文献情報を(英語論文に関しては日本語の紹介文を)載せることで、より多くの方に利用していただきやすくするためです。

 

管楽器奏者の鼻咽腔閉鎖機能不全は、日本国内では耳鼻咽喉科医の中でも認知度が低い現状があります。
情報を求めている方々の、少しでもお役に立てれば幸いです。

尚、この記事及び元ツイートは論文(の存在)を紹介するだけの簡単なものですので、詳しい内容については元の論文を参照してください。
日本語の論文は、本文を部分的に引用することで紹介としています。

 

 

管楽器奏者の「鼻抜け」、鼻咽腔閉鎖機能不全についての論文の紹介①

吹奏楽器演奏時における鼻咽腔閉鎖機能不全に対して上咽頭脂肪注入が奏効した例 」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/123/3/123_251/_pdf

 

“Stress Velopharyngeal Insufficiency / Incompetence(以下 SVPI)は,吹奏楽器演奏時のみ,鼻咽腔閉鎖機能不全を引き起こす病態”

 

“構音を含む日常生活では支障がないものの,吹奏楽器の演奏時に,呼気が鼻腔より抜けることで演奏に支障を来す…職業演奏家やそれを目指す者にとっては,生涯にかかわる重大な問題となり得る”

 

“口腔内圧は会話時6mmHgであるのに対して吹奏楽器演奏時では130mmHgと高いため 2),SPVIでは通常の会話に支障がないにもかかわらず,口腔内圧が高い状態である吹奏楽器を演奏する時のみ,呼気が鼻腔に漏出し思ったように演奏できない,あるいは長時間吹き続けられないという症状が出現する”

 

“海外では吹奏楽器演奏者の31~39%がSVPI症状を経験…医師(形成外科,耳鼻咽喉科)の27%がSVPI症状を呈する患者を診たことがある” “本邦では…演奏者の中では…「鼻抜け」としてある程度認知されている…われわれが渉猟し得た限り医学論文としての報告はなく,耳鼻咽喉科医師の中での認知度も低い”

 

“SVPIの原因として,軽度の粘膜下口蓋裂,口蓋裂手術歴,アデノイド切除術手術歴,短い軟口蓋,深咽頭が考えられているが,解剖学的異常がない症例も存在する” “職業演奏家を目指し練習時間が増えてきた若年層にSVPIが出現することが多く,練習による身体的疲労も原因の一つ”

 

“症例:19歳,男性,音楽大学の学生”“15歳よりクラリネット演奏時に鼻から呼気が漏れる症状が出現”
“軟口蓋の挙上に異常は認めなかった.アデノイドの小隆起を認め,頬ふくらまし時にその左側より呼気の漏出を認めた(図1,図2).開鼻声は認めなかった”

 

“軟口蓋の挙上運動は良好であるため,物理的な閉鎖不全と判断し,リハビリではなく手術の方針とした.上咽頭へ試験的に生理食塩水を5ml注入したところ,呼気の漏出が消失したため,初診から3カ月後に上咽頭後壁への自家脂肪注入術を施行”

 

“マウスピースリードでの吹奏持続時間(3回の平均値)は術前20.8秒に対して,術後3カ月で37.7秒,術後1年で36.7秒と大幅な延長”“本人の自覚としては「鼻に抜けなくなって吹きやすくなり,演奏の幅が広がった」と改善を認めた”

 

*深咽頭(深咽頭腔症)=deep pharynx(deep nasopharynx)=口蓋垂基部から咽頭後壁までの距離が長い(咽頭腔が深い=大きい)こと

 

*深咽頭の詳しい解説>https://jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/123/5/123_371/_pdf/-char/ja… “deep pharynxの明確な診断基準はないが,調査し得た中で咽頭腔の深さの絶対値を正常群の値と比較する方法 と,軟口蓋長指数(軟口蓋長/上咽頭腔の深さ)を算出する方法がある”

 


元ツイート: